どうすれば日本の
プロゴルファーは
世界で勝てるのか

高速グリーンが強いゴルファーを育てる

ゴルフ世界一を決めるメジャー・全米オープンでは日本選手5人のうち、4人のプロが予選落ち。ただ一人米ツアーで活躍する松山英樹がかろうじて18位にとどまった。5年後の東京五輸でゴルフは正式種目。どうすれば日本人は世界で勝てるか。そこで千葉県の富里ゴルフ倶楽部とカレドニアン・ゴルフクラブで、マスターズ並みの難グリーンを造って注目を浴びた早川治良会長にお話を伺った。

宮崎絋一=インタビュー・構成 細田榮久=撮影

早川治良
東京グリーン富里カレドニアン会長

1936 年1月生まれ。慶應義塾大卒。81年東京グリーンを設立し、ゴルフ史家の摂津茂和氏、ゴルフ評論家・コース設計家の金田武明氏(ともに故人)の意見を参考に「技と知力を必要とする世界レベルのコース」の理念の下に富里GC、カレドニアンGCを建設。

日本のプロが世界で通用しない原因はどこにあるのでしょうか。
早川

正直日本は相当遅れています。今やプロゴルフの世界レベルはオーガスタの14フィート超高速グリーンが中心(※)。日本のレベルアップには、ゴルフ場がグリーンの高速化に挑むことが必要です。そこで当社が先陣を切り、昨年春から「オーガスタ並みの高速グリーンにチャレンジ」と高いハードルを掲げました。

※グリーンスピードはスティンプメーターという専用器具で計測し、フィートで表す。

プロゴルフのレベルアップを図るためということですか。
早川

いえ、日本のゴルフ全体を考えてのことです。ゴルフの基準打数パー72のうち半分の36ストロークはパッティングが占めています。この重要なグリーンを速く、難しくしなければ、ゲームとしての面白さが出てきません。マスターズや全米オープンのような、グリーンなら、ゲームもエキサイティングになり、面白みが出てきます。しかし残念ながら日本のトーナメントではそんなグリーンはほとんど皆無です。

しかし営業コストや、利益を考えると割に合わないのでは?
早川

確かにおっしゃる通りです。14フィート級にチャレンジするだけで、芝の選定、育成、管理、耐久テスト、保護、キーパーの育成など膨大な費用と手間暇がかかります。でも世界レベルにするにはそれを恐れてはできません。

コースは人を育てるといいます。価格を下げてゴルファーの裾野を広げることも大切ですが、やはり一割から二割は世界に通用するコースでないと、レベルを上げる道筋がつくれません。ましてや東京五輪が控えています。こうした環境整備は私たちゴルフ界に従事する人間の責務と考えています。

超高速グリーンや、高難度のコースでプレーすると何が変わりますか?
早川
カレドニアン、富里両コースの標語は「TAM ARTE QUAM MARTE」といいまして、これは古代ローマ軍が掲げたラテン語で「力と同様に技も」という意味です。スコットランドのロイヤル・トルーンGCでその言葉を見つけ、名誉支配人の許可を得て標語にしました。ゴルフは自然との闘いであり、そこを攻略するには力だけでなく、頭脳、知性、精神力など総合力を必要とするもの。世界の名コースはこれらのコンセプトを備えています。速いグリーンや難易度の高いコースでは、ゴルフが奥の深い知的なゲームになります。私はマスターズや全米、全英オープンなどを見るにつけ、ゴルフを格闘技と感じていますが、つまりは人間力のすべてを露わにする。それがゴルフの面白いところであり、怖いところでもあります。
日本のプロが世界に通用しないのは、安易なコースに慣れきった知略の欠如だったわけですね。ぜひ本当に強いゴルファーを育ててください。

『PRESIDENT』2015年8月3日号より

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