戦略型で知られる
名コースは超高速
グリーンの常態化に邁進

2017年9月23、24日にテレビ放映された『アジアパシフィックダイヤモンドカップゴルフ2017』の決勝ラウンドで映し出された画面に目を奪われたゴルファーは多かったに違いない。国内ではしばらくぶりに見せる変化に富んで美しいゴルフコースの姿と、そのコースのあちこちでプロゴルファーたちが翻弄され、緊迫した最終4ホールでの大逆転劇が映し出されていたからだ。

会場はカレドニアン・ゴルフクラブ。スコットランドの古名がクラブ名称。1990年10月開場で「日本プロゴルフ選手権」(2000年)、「日本プロゴルフシニア選手権」(2002年)、男女の「日本学生ゴルフ選手権」(1995年)、「関東アマチュアゴルフ選手権」(1998年)など代表的な公式戦をはじめ、「PGAフィランソロピートーナメント」、「雲仙普賢岳被災者救済チャリティ・プロアマ」、「タカラワールド・インビテーショナル」、「インペリアル・トーナメント」、「三越シニア・クラシック」、「TPCスターツ・シニア」、「樋口久子・紀文クラシック」など開催された歴代トーナメントは数多い。

設計はJ・マイケル・ポーレット(米国)。日本のゴルフ・ジャーナリズムをリードした故・金田武明氏から紹介された俊英の起用だった。18ホールの1ホール1ホールが際立った個性を備えており、一つとして類型のホールはなく、戦略性に富んだ18ホールそれぞれは生き生きとハーモニーしあって続いている。

ティグラウンドに立ったプレーヤーはどのホールでもその変化の大きさと景観の素晴らしさに圧倒され、ダイナミックにうねりながら伸びるフェアウエー、巧みに配置されたバンカーとグリーン、さらに池にと挑戦意欲をかきたてられる。その美しさは芸術的である。

現在、ゴルフコースデザイナーの世界にあってトップの地位を保っている一人、トム・ドーク氏が出版した『THE Confidential GUIDE to Golf Courses』の評価基準にあるように、カレドニアンGCは日本の名門とランキングされるゴルフ場の中で「6」という高評価を得ていることでもうかがうことができる。彼は「非常に良いコース。特に13番パー4、15番パー5 はその豊かな戦略性とドラマチックな佇まいで世界のトップクラス」という評価をしているのだ。

理念と設計の哲学が見事に合致して誕生

「ゴルフコースの原点はスコットランドのリンクスにある。ぜひ、リンクス・コースを巡礼すべきだ。海辺のリンクス・コースこそ自然との闘いを強いられるからだ」

東京グリーン富里カレドニアン(株)の早川治良会長が「世界に通用するコースを造るには何が必要か?」を、日本のゴルフ史家の第一人者、摂津茂和氏(明治32年~昭和63年)に教えをいただいたときの言葉だ。

1984年、わが意を得た早川会長はセント・アンドリュース オールドコースをはじめスコットランドからロイヤルセント・ジョージズGCのあるイングランドまで全英オープンの舞台になる伝統的な名コースを巡礼し丹念にラウンドしてきた。「リンクス・コースをプレーした結果、ゴルフとは自然と人間との闘いであることを身に染みて知った。その途で目にしたのがロイヤル・トゥルーンGCのモットーである『TAM ARTE QUAM MARTE〈力と同様に知略も〉』(ラテン語)である。ゴルフは力でプレーするだけではなく、人間の知力をも駆使してこその闘いだ」と。

ロイヤル・トゥルーンGCのセクレタリーからこのモットーの使用許可を得て、ポーレットとともにリンクス魂をこめたコース造りに着手した。ポーレットは米国人だが、リンクス・コースについてよく学び、それを設計哲学にしていたことから二人は意気投合。

果たして出来上がった見事なルーティングとデザインの設計図はこれまでの日本のゴルフコースの概念を覆す斬新な考え方が描かれていた。そこには“対角線デザイン”の発想が貫かれており、具体的にいえば目標を斜めに設定するという考え方である。もともとはスコットランドの名コース、ノースベリックGC西コースの15番「レダン」ホールに由来するもので、ポーレットの設計図はその思想を拡大し戦略型の典型を示していた。

カレドニアンGCがスコットランド・リンクス精神を盛り込んだ戦略型コースといわれる所以がここにある。

名物の美しい渚バンカーから

ショットに重要な「角度」と「距離」の組み合わせ

ゴルフというゲームは「角度のゲーム」であり、一方「距離のゲーム」であるということを知っておきたい。角度と距離の矛盾をゴルファーは自分で見つけ判断する。

逆にこの距離と角度をうまく利用し、設計者はゴルファーに対してバラエティに富んだコースをデザインするのである。

たとえば角度と距離のバラエティを出すためには当然、ティグラウンドの様相から変えていかねばならない。前後の距離の差をかなり大きくしたホールや横の位置関係、形状などマルチプルにティグラウンドを配置することになる。

さて、ゴルフは自然の中で自分に甘えることなく“あるがまま”でプレーすることだけだ。カレドニアンGCは次の時代に進み始めている。それはオーガスタ並みの超高速グリーンを造り、それを常態化すること。早川会長の執念が実ることを祈りたい。

『ZAITEN GOLF 2018』1月臨時増刊号より

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