バンカーに薄化粧
ゴルフの伝統を守り
憧れの舞台と成す

GEW2021年9月号掲載 各社トップに直撃! 本音インタビュー VIPの視点 東京グリーン富里カレドニアン 会長 早川治良氏 HaruyoshiHayakawa

バンカーに薄化粧
ゴルフの伝統守り 憧れの舞台と成す

「品格と算盤」「神は細部に宿る」──。御年85歳、東京グリーンの早川治良会長は、ゴルフ場経営の極意をそう話す。一分の隙もないスーツ姿は、そのままカレドニアンGC(千葉県)の妥協なき美観の維持に通底する。大小120のバンカーは週に一度、新しい白砂を補充して、それを「薄化粧」と艶っぽい。
超高速ワングリーン、リンクスを模したやわらかなアンジュレーションで2017年、日本一のゴルフ場に選ばれたが、その道程は苦難の半世紀。

=聞き手・片山哲郎=

大変ご無沙汰をしております。如何ですか、最近は?
「はい。今年で85歳なんですが、どうにか元気でやっております。片山さんもお元気そうで(笑)」
ありがとうございます。それにしてもコロナ、凄いですねえ。
「まったくですねぇ、去年の春はひどく影響を受けましたけど、ゴルフは『3密回避』で健康的ということで、 去年の6月に回復しました。特に若い人の動きが目立ちまして、7~8月には前年を大きく上回り、昨年下期は15%増、今年も同様のペースで来ております。当初は資金繰りを心配して融資を受けましたが、その必要はなかったですねぇ。お借りした資金で古い設備を改めて、メンバーには喜んで頂いてます」
なるほど。御社は富里GC(千葉県、1989年開業)とカレドニアンGC(同、1990年開業)を運営してますが、年商はどれくらいですか。
「年会費を入れますと、両コースで15億円ほどになりますが、カレドニアンが2~3割多い感じです」
富里は成田空港の拡張予定地に入っていますが、現状は如何です?
「その話が出てから5~6年経ちますが、国の事業ですから拒否はできないと思います。詳細はこれからの話になるでしょう」
富里の経営状況は如何ですか。
「富里はメンバーの高齢化が進んでおりまして、会員1300人のうち稼働会員は500人ほどで、残りの800人は休眠状態です。もったいない話ですが、お年を召した方が多いもので・・・・」
一方のカレドニアンは?
「こちらは若いアスリートゴルファーの人気が出て、活発に動いているんですよ(笑)。3年ほど前、週日会員を募集したところ800人ほど集まりましてね。金額は初回が60万円、2回目が80万円ですが、びっくりするほど反応が良かったです」
ゴルフ熱を表わしてますね。ところで、ゴルフ場経営はほぼ半世紀のキャリアですが、これまでを振り返って如何でしょう。
「随分長いことやっておりますが、わたしが初めてゴルフ場ビジネスに携わったのは皆川城CC(栃木県、1973年開業)で、今の会社を立ち上げる前のことです。その10年後にオーク・ヒルズCC(千葉県、1982年開業)にも携わり、自分の会社を設立して富里、カレドニアンを開場しますが、この間、オイルショックやバブルの崩壊など、経済環境は激しく変わります。特に投資予算は皆川城(18億円)とオーク・ヒルズ(30億円)に比べまして、富里(220億円)とカレドニアン(260億円)は桁違いに多い。急激なインフレで莫大なコストが掛かってしまい、そこにバブルの崩壊ですから一時は大変苦しみました」
その苦難を乗り越えてカレドニアンは2017年、週刊パーゴルフのアンケート企画で日本一のゴルフ場(同年12月26日号)に選ばれました。すごい復活劇ですね。
「先日、『Golf伝統と革命』(35年史)という本を出しまして、これまでの歩みを載せました。一言でいえば、わたしのゴルフ場に対する想いや理想を書いております。 カレドニアンも富里も、ワングリーンのリンクスにこだわりましたが、それは摂津茂和さん(ゴルフ史家)と金田武明さん(著述・コース設計家)に教えを受けたことが大きかったですね。摂津さんから『本場のリンクスを学びなさい』と言われ、1984年に渡英しましたが、リンクスとワングリーンヘのこだわりは当時の体験によるものです」
『35年史抜粋』(摂津茂和氏寄稿)
■リンクスに関わる記述

リンクスに共通する特色は、波のごとき複雑なアンデュレーションと自然にてきた大小のバンカーやサンドヒルである(中略)設計家のニュートン・ウェザレッドは「アンデュレーションを生命とするボール・ゲームはゴルフ以外にはない。これは神がコルフに与えた最も誇るべき特色である」と喝破した。
■ワングリーンに関わる記述
「ゴルフ・コースにおけるグリーンは、いうならば肖像画における顔である。着衣や背景、備品などは単にアクセサリーで、顔のみが真実をつたえ、性格を表現し、良くも悪くも絵の価値を決定する」(チャールズ・マクドナルド)。マクドナルドの精神からいえば、一つのホールに二つの顔をつけるのは、それだけ焦点をほかすうえに、そのホールの最も大切な個性と機能を致命的に破壊する。世界に類のない二つの顔をもったモンスター的設計から早く脱却して、すべてのコルファーが公平に実力を発揮できる愉しいコース造りにふみきるべきである。

ワングリーンにこだわる理由とは

「そもそも、ワングリーンにつきましては金田さんから強く言われました。オーク・ヒルズを造るときに金田さんに顧問を依頼したら『ワングリーンにしなきゃ協力しない』と言われましてね。原設計は富澤廣親さんのツーグリーンでしたが、再設計をロバート・トレント・ジョーンズJr、実際にはマイケル・ポーレットが手掛けた部分が多いんですが、ワングリーンに変えて金田さんの意向を尊重したんです。ベントのワングリーンは関東で初めてだったと思いますよ。軽井沢や北海道にはありましたが、関東では『もたない』という声が大半でしたから」
「もたない」というのは、メンテナンス上の問題ですか。
「当時はツーグリーンが日本の常識でした。交互に使いまわせるメリットのほか、当時のベント芝は夏場に弱いのが常識で、特に関東・関西でその意識が強かったのです。そこで金田さんはアメリカのUSGA方式、つまり芝の下を粒子の異なる砂利と砂質の構造にして、最新の芝種を使えば大丈夫だ、と」
USGA方式とは?
「USGAの研究部門で、グリーンに関わる当時最新の構造です。それ以前は土のグリーンですよね。土が8割、ピュアサンドではない砂が2割で、その上に芝を張る。それが日本の常識で、井上誠一さんは素晴らしい設計家ですが、グリーンは『砲台』で周囲が低くなっています。これは水ハケを考えた設計ですが、USGA方式の床構造は砂利と砂で排水・保水を管理できるため『砲台』にする必要がない。そのあたりの事情に通じた金田さんは、日本でもベントのワングリーンに挑戦しようとされたのです」
『35年史抜粋』(金田武明氏寄稿)
日本では土主体のグリーンだから、人間の重みに耐えられないのだという。新型ワングリーンは砂主体(砂とピートモス)であり、クッションが利くので、その心配はしないでよい。黒土は、人間に農作物という恩恵を与える長い歴史をもっている。農作物に黒土がよいからといって、芝生にもよいとはいえない。黒土はグリーンにとって最も望ましくない性質をもっている。とくに保水性がよいことがいけないのだ。暑い日に水をまくと、その水を大切に保ってしまう。そこで湯になり、根が枯れる。高麗は生きるが、ベントは病気になる。
「今でこそ関東もベントのワングリーンが増えましたが、金田さんとわたしがオーク・ヒルズで挑戦したときは清水の舞台で『失敗したらどうするんだ』と。周囲から強く反対されたものですよ」
グリーンはゴルフ場の命だから失敗したら経営を直撃する。それでも挑戦した理由は何ですか?
「理由は簡単です。ゴルフは1打目よりは2打目、2打目よりは3打目のターゲットが狭まるのが基本です。摂津さんの話にもありますが、『ふたつの顔』はあり得ませんし、富里とカレドニアンを設計したポーレットも、ツーグリーンは『富士山がふたつ並んでいるようなもの』と話しています。ツーグリーンは景観的にも原則的にもおかしいのです」

「神は細部に宿る」2億円のコース管理

カレドニアンの特徴は超高速グリーンにもありますが、マスターズ並の14フィートに成功したとか。このスピードは、車のボンネットの上でパッティングするようなもの、と言われますが。
「常時出すことは難しいのですが、数年前に14フィートが出たんですよ。それでコース設計家の方々を招いたら、ある方が皮肉っぽく『でも早川さん、こんなに速いグリーンで営業はムリでしょう。パッィテングしたらグリーンから出ちゃうんだから』と言われましてね(苦笑)。

もちろん通常営業ではできませんが、これでカレドニアンのグリーンが評判になりました。これ以外のこだわりはコースの美しさです。わたしは美学を勉強しましたが、『神は細部に宿る』という言葉が好きなんです。ゴルフ場も芸術作品と同じでとにかく細部を大事にします。手を抜くと全体が緩むんですよ」

画竜点睛を欠く。
「それと同じ意味合いですね」
管理費用はどれくらいですか。
「年間2億円ほどです。ふつうはその半分、1億円ほどだと思いますが『神は細部に宿る』ので(笑)」
そのうち人件費は?
「コース課にはアルバイトを入れて25人ほどおりますが、コース課の人件費だけで1億円ほどです」
25人の仕事内容は?
「一例を申し上げますと、バンカーの作業があります。カレドニアンには大小120のバンカーがありますが、これが全部真っ白なんですよ。常時真っ白に保つために朝晩4人がバンカー専門で管理します。雨が降ると黒ずむので、週に一度、新しい砂を補充するんですね。言ってみれば『薄化粧』ですな」
艶っぽい話ですねえ(笑)。砂に名前はあるんですか。
「あります。『白竜』という砂で、花崗岩を切り出すときに出る粉のような残砂ですが、これを30年以上お付き合いのある業者から仕入れてます。1回につき小型トラック3台分、毎週なのでバンカーは少し上がってきます。昔は『船底』で難しかったので、逆にメンバーは喜んでます。バンカーをキレイに保つとメンバーが率先して均すんですね。するとゲストも倣います」
コースがプレーヤーの振る舞いを育てるわけですね。
「おっしゃるとおりで、自分の足跡を残さない、非常に良い循環になっています。年間入場者は4万4000人ですが、若い世代の来場率も高まっています。若返りを進める優遇策として、通常の書換料は120万円ですが、相続の場合は15万円ほどなんです。若いアスリートが増えるとコースに活気が出ますので、フルバックティから自由にプレーして頂いてます。その際、カートに黄色い旗を立てますが、全体の3割ほどがフルバックなのでコース中を黄色い旗が走ってますよ(笑)」

会員の来場比率は異例の5割越え

カレドニアンは高いですね。ゲストは平日2万3000円で土日は3万円を少し超えます。30~40代のビジターにはキツイでしょう。
「あのぉ、ひとつ申し上げたいことは、ウチはメンバーの来場率がもの凄く高いんですよ。ふつうはメンバー3割、ゲスト7割で、ゲストヘの依存率が高いのですが、カレドニアンのメンバー比率は54%です。メンバー料金はセルフだと8000円、ハーフのセルフは5600円とリーズナブルなど、会員中心の経営を心掛けています」
収益的に困りませんか?
「そうですねえ(苦笑)。平日の入場者は以前、一日90人が平均でしたが、今は120人ほどでバランスはとれています。それと高速グリーンでバンカーは真っ白だから、メンバーが誇りに思ってゲストを連れて来るんですね。それで来るのが若い富裕層なんですよ。リーマンショックあたりからITの成功者が出てきたり、来場者のタイプが変わりましたが、みなさんマスターズをご覧になって、あんなコースでプレーしたいと思われるのでしょう。

要するに憧れですね。カレドニアンはオーガスタと似たコンセプトで、ラフは長くないけれど、キレイに刈り込んでグリーンでスリルを味わえる。メンバーと来て、入会を希望する人が増えています」

刈高はどれくらいですか?
「フェアウェイは高麗で12mm、ラフは野芝で25mm、グリーンは第4~5世代のベントです」
美観を保つには管理技術が大事ですが、人材育成は如何ですか?
「はい。コース課のスタッフは全作業をこなせるように教育して、全員がグリーンを刈れます。以前は7~8年掛かりましたが、今は高校出て2年ほどで一人前に育ちます。昔は『先輩の背中を見て覚えろ』という指導でしたが、それじゃ通用しませんよ。毎日毎日、細かい部分の意味を含めて教えます。山本五十六の教育訓に『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ』とありますが、当社の教育はあれと同じで、歩を金にする教育と申しましょうか、モチベーションと教育・啓蒙に努めます」
従業員数はどれくらいですか。
「キャディも食堂も全部含めて約120人、正社員は半分です」
離職率はどうですか。
「これは、もの凄く問題ですよ。毎年周辺の高校に顔を出して10人ほど採りますが、コース課の場合は5人入れると3人、下手すると4人辞めた年もありました。想像以上にキツいんでしょうねぇ」
早起きなんですよね
「5時半から芝刈りです。8時間労働ですから、早出の社員は早く帰りますが・・・・。『単なる作業員ではなく、緑の博士になりなさい』と話しているんですね。もちろん言葉だけではなく、インセンティブもつけています。コース課の場合はグリーンの刈込みのスビードや精度、刈っている間に肥料不足や水ハケの悪い箇所に気づいて報告しているかなど、点数化して給与に反映しますが、初任給も上げました。以前は職域に関係なく高卒は16万円でしたが、『博士になれ』で同じ給料じゃ割に合わないので21万円に上げたんですね。大卒と同レベルで、頑張れば3年で先輩を追い越せます」

「中間法人」の設立で自主再建の道を開く

一時は経営難に陥りましたが「中間法人」の設立で乗り切りました。会社側が45%、会員側が45%、業務提携の伊藤忠が10%の株をもって、法的整理ではなく自主再建の道を開いたものですね。 「あれは20年ほど前のことです。預託金の返還問題で、自主再建を目指すために『中間法人』を立ち上げました。メンバーの理解を得るのが大変でしたけど、当時は中間法人法ができそうなタイミングで、それを研究なさっていた顧問弁護士に『やってみたら』と言われましてね。会員の代表で『預託金問題検討委員会』をつくり、銀行の支店長や伊藤忠の方にも入って頂き、民事再生、会社更生法、特別清算、それに中間法人を加えて、どれにするか議論を重ねたのです」
中間法人になった理由は?
「会社と会員が一体となって再建していくには、最も適したやり方だったと思いますね。中間法人が東京グリーンの大株主になって、会員は間接株主会員になります。会員の代表が中間法人を通して東京グリーンの経営に参画し、一緒にゴルフ場の価値を高めよう、と。ゴルフ場の価値が高まれば、会員は将来的に様々なベネフィットが得られます」
ゴルフ場の価値が上がれば、会員価値も向上する。
「おっしゃるとおりで、とにかくメンバーの声に耳を傾けて些細なことでも改善します。バンカーの砂も、おもてなしのサービスも、一切の妥協なく質を高めています」
ようやくわかりました。「神は細部に宿る」の経営哲学は、理想のコースを求める思想的な柱であり、経営再建上の柱でもあるわけですね。量を目指す価格競争ではなく、高みを目指す競争で会員価値を高める。
「その際に大事なことは、理想の倶楽部ライフをどのように考えるかです。我々はゴルフ倶楽部ですから、ゴルフの面白さを、その神髄を含めて味わえることを重視します。面白さは技術追及の楽しさで、1打1打を真剣に追求する姿勢ですね。そこで競技会の充実を図っています。年間150回は世界で一番多いと思いますよ。ゴルフの本当の面白さはマッチプレーなので、平日にもこれを取り入れています」
一方でゴルフ場の「社会的価値」については如何ですか。日本のゴルフ場森林は、年間約400万トンのC02を吸収・固定して、公共財の役目を果たしています。ゴルフ場が社会から愛されるには「ゴルフ」以外のことも大事ですね。
「ゴルフ場には3~4割、元の森林が残りますので『緑の保全』は担えます。田んぼや畑を見ると農薬で虫や鳥がいないですよ。ゴルフ場の中にはいろんな虫や鳥、蛇はいるし蛙もいます。里山保護の観点でもゴルフ場の役割は大きいでしょう。

それと災害時の避難所にも使えますが、そもそもゴルフ場自体が防災に役立っているんですね。ゴルフ場の造成時に大規模開発規制があって、溜め池・調整池をゴルフ場の面積に応じて設けます。たとえば雨が1時間に50mm以上降った場合は、一気に外へ出さないで、コース内に溜めておく。それでゴルフ場の下方にある住宅は水害を免れる可能性もありますし、それとは別に健康長寿への寄与も大きいでしょう。お年寄りがゴルフを長く続ければ、医療費の削減効果も期待できます」

加何に水を切れるか水分率15%の勝負

「ゴルフには様々な効用がありますが、このゲームが末永く繋栄するためには大衆化を図る一方で、せめて2割のゴルフ場が伝統や本質をきちんと守り、伝承する必要があると思うんですね。そこに価値を見出して経営しないと、単に飛ばせばいいとか練習場の延長になって、飽きられると思うんです。ゴルフに限ったことではなく、憧れや夢は必要で、これを継承していく義務が我々にはあると思っています」
カレドニアンは「憧憬」のリーディングカンパニーになるんだと。その点を戦略論として考えると?
「我々、中小企業ですよ。中小企業が生き残るには強力なブランドが必要で、カレドニアンは地形が良い、レイアウトが良い、ワングリーンで戦略性も高いですが、それだけではブランドとして弱いんですね。そこでほかのどこにもない14フィートの超高速グリーンを、唯一無二の特徴として目指したのです」
もう一度確認します。なぜ、ほかのコースではできないのか、技術的な秘訣を教えてください。
「秘訣って、これはノウハウですからねえ・・・・」
門外不出ですか?
「んー、まあいいでしょう。先ほどUSGA方式の話をしましたが、当時のベントは水を要求したんです。だから富里を造ったときは夕方、スプリンクラーでグリーンに水溜りができるほど散水していました。当時流行のグリーンは、米ツアーでもニクラウスの高い弾道が着弾すると3mぐらいバックスピンで戻る。ギャラリーはバックスビンで喜んで、しかもキレイなゼブラ刈りです。それが良いと思われました。 ところがニューベントは水が不要なんですね。ニューベントの水分量は20%を超えたらダメで、如何に15%に近づけるかです」
15%から20%の間で勝負する。
「はい。だけど日本の大半のグリーンは30%で、水を切ることを恐れている。一度根付いた意識はなかなか変えられません。その次は、単に水を切るだけじゃダメで、コアリング、つまりエアレーションのことですが、一種の『天地返し』です。田んぼは天地返しで土を反転させて有機物の分解を促します。土壌改良で古くなった床土を入れ替える作業ですが、コアリングはグリーンに棒で穴を空けて、引っこ抜くとコア(廃棄芝)が抜けます。これをやると芝が回復するまでの間、クオリティがかなり落ちるんですよ」
はあ・・・・・・・・・。
「それはマズいということで、コアを抜かない方式、これをバーチカルドレーンと言いますが、穴を開けるだけの方式に切り替えました。表面から25cm前後まで穴を開けて、不透水層を撹拌して地下構造を改善する。有機肥料で根が健全に育つようにして、2.8mmぐらいの刈高でローラーをかける。それで初めて14フィートが実現しますが、問題は回数で、昔のコアリングは年2回。常識的なバーチカルドレーンは月1回なんですが、ウチの場合は月2回、これが非常に手間なんです」

独自の経営哲学は「品格」と「算盤」

凄いノウハウですねえ。
「ここに辿り着くまでに、どれだけテストを繰り返したか・・・・」
コース内にテスト用地がある?
「真夏の暑いときに極限テストをやっています。芝は14種類からはじまって絞り込み、シャーク、オーソリティ、タイイ、007などですね。グリーンキーパーには『テスト!テスト!テスト!』と耳にタコができるほど言いましてね、当初は『ダメになっても知りませんよッ』と彼らもケンカ腰でしたが、これはぼくの信念ですから、絶対に妥協はいたしません」
ブランドヘの執念ですね。
「よく戦略性って言いますが、大半のひとはわかりませんよ。その戦略性をわかりやすく表現するのが高速グリーンで、単にピンを狙えばいいわけではなく、乗せた場所によってはこぼれてしまう。グリーンから逆算してルートを考えると、ゴルフはとても知的で奥深いゲームになるんです。14フィートに挑戦して7~8年今も研究を続けています。ヒト、モノ、カネを注ぎ込んで、とにかくお金を惜しむな、と」
借金、どうするんですか?
「そうですねえ(苦笑)。ゴルフ場経営は利潤追求型ではなく、先行投資でメンバーに喜んで頂くのが神髄だと思いますが(机を叩きながら)だけどもッ、お金がなければダメなんですッ。渋沢栄一は『論語と算盤』という言葉を残しましたが、わたしは『品格と算盤』です。14フィートもただ速いだけではなく、品格がなければダメですよ。ゴルフの伝統やマナー、ルールや立ち居振る舞いをわきまえて、ゴルフの神髄、本当の面白さとは何かを14フィートを通して探求しています」
品格って何ですか?
「というご質問になりますよね。わたしは、カレドニアンの門を入るときに、メンバーが緊張を覚えることが品格に通じると思っております」
門を潜ると背筋が伸びる。
「はい。門を入ると素晴らしい雰囲気に包まれて、クラブハウスもスタッフの接遇もみんな素晴らしい。ジーンズなんかじゃ入れません。ウチは競技会が多いので、みなさんブレザーを着て、コロナ対策を万全にして交流します。全員が楽しむためには『飛び賞』を出さなきゃダメなんですね。それで以前は商品券でしたけど、今は大変些少ながら、常識の範囲で現金です」
品格がないですねぇ。
「はい(笑)」
書いてもいいですか?
「はい。やっばり中小企業ですから品格だけじゃダメです、算盤が合わないと。合わすためには自分の利益なんか追求しない、いろんな面でメンバーにお返しすることです」
給料なんかいらない、と。
「ふふふふ」
いりますよね。
「これはオフレコですが、ぼくの給料はバブル時代の半分です。もちろん従業員の給与は戻しています」
でも、元が高いんですよね。
「支配人と変わりません」
なるほど。自らゴルフの神髄を極める経営者。拝金主義が跋扈する世情で非常に品のあるお話です。感動しました。書かせてください。
「んー、事実だからいいでしょう。片山さんにお任せします(笑)」

GEW2021年9月号掲載

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