世界最高のコース造り

世界最高のコース造りを目指し
スコットランド指向の戦略型コースを開発

東京グリーン株式会社 代表取締役社長
早川 治良 氏
聞き手●大山 茂夫


the FORUM アベレージゴルファーからトッププロまで楽しめる奥行きの深さを秘めた18 ホールズ。
四季折々の変化と共にさまざまな攻略ルートがあなたに新鮮な驚きを与えるはずです。

どのようなお考えから、戦略型ゴルフコースを造られたのですか。
早川

私は最初、耐火煉瓦の仕事をしていて、経営の多角化をしようと、何がいいかを研究したんです。私自身ゴルフが好きだったこともありますが、ゴルフ場は広大な土地を使いますから、いい立地でいいものを造れば、競争にも耐えられるんじゃないかという発想で始めたわけです。

学校では美学を専攻しましてね。普通なら経済界へ行くのは少ないと思うのですけれども、変わり種でしたから(笑)。ゴルフ場をやるにしても「ロマンを持って芸術作品のようなものを作り出したい」という気持ちが強かったですね。

私は仕事をやる場合に「自分の今一番欲しいものは何か」というところから出発するようにしているんです。ゴルフ場にしてもそうですね。私自身がゴルファーとして、どういうコースでプレーしたいとか、どういうクラブ運営でクラブライフを楽しみたいかという自分のニーズを、常に追求することにしております。その後で、それが客観的に見て世の中のニーズと合致してるのかなと、割と単純思考で仕事をするようにしているんですよ(笑)。

ゴルフは、スポーツとしても飽きがこないし、接待とか遊びとかレジャー的な要素もある。老若男女だれでもできて、奥行きが深い。それで、どうせやるなら一生涯楽しめる、面白いものを造り出したい。では何がゴルフを面白くさせるのかということになる。金田武明先生や設計者の人たちに話を聞いているうちに、ゴルフの本当の面白さはスコットランドにあるんじゃないかということで、私自身も行ってプレーもしてきました。

ゴルフ場の原点で、どんなことを感じられたのですか。
早川

最初に「皆川城カントリークラブ」を造ったときは、皆が求めているもの、自分が求めているものは、後で考えてみると奥深さがなかったですね。広くて長くて、フラットであれば世界に通用するチャンピオンコースというように単純に考えてました。7,000ヤード以上ないとチャンピオンコースじゃないっていう戦後の風潮があったんですね。設計者も皆そういう傾向でレイアウトしていました。

スコットランドに行ってみて、本当のゴルフの面白さは、そういうこととは全然別のところにあることが分かりました。大自然の波打つようなところで、大雨が降ろうと大風が吹こうと、自然と対決しながら忍耐強くやっていく。海辺のリンクスに最初のコースができたわけですが、自然の大地に人間がゴルフゲームを作りあげていったという感じ。それがよく分かりましたね。

日本でも普及期を過ぎて、本物が求められるようになったんですね。
早川

何回も何回もやっていると、ただフラットで長いだけじゃつまらないという感じに当然なる。やはりスコットランドにある原点、自然の変化のある状態をいかに内陸にも再現するかということだと思うのです。私は前にいた会社で二つゴルフ場を造りましたが、なかなか理想通りに行かなくて、今回独立して「富里ゴルフ倶楽部」を造ったわけです。どんな事業でもそうでしょうが、トップのビジョンと決断が重要ですね。特に本物を作り出すには、思いきった手を打つ強力なリーダーシップと、それに共鳴して情熱を燃やしてくれる仲間が必要ですね。

平成元年6月1日「富里ゴルフ倶楽部」開場式にて
良いコースの条件とは何ですか。
早川

アメリカでも初期には、リンクスの要素を取り入れた、いいコースができていたんですよ。戦後ゴルフが大衆化する段階で違ったものになって、それが日本に入ってきてしまった。先程も言ったように、チャンピオンコースは広くて長くてフラットというのが日本流の考え方で、それに交通が便利で、会員数が少なく質が高くて、経営がいいというのが、日本ではいいコースと評価されています。しかし、アメリカでは毎年「ゴルフダイジェスト」などで、ゴルフに造詣の深い人たちが投票して世界のベスト100のコースを選んでいますが、それは今言った基準じゃないんです。

一つは戦略的な要素がどのくらいあるか。いかに技術と頭を使わせるかですね。それから多様性。同じようなホールの連続だったらつまらない。一つ一つのホールがいかに変化があって、14本のクラブを使いこなさなければいけないか、という要素。それから印象度がいかに強いか。景観的な美しさも大事な要素です。もう一つはいかにエキサイトできるかという要素です。そんなことが基準になっていて、日本とだいぶ違うんですよ。

エキサイトするというのは?
早川

たとえば海の横を行くコースで、ベストルートは海の危険を冒して攻めて行く。海との戦いになってエキサイトしますね。またグリーンの前に池がある。その池ギリギリに攻めないと、いいスコアにつながらない。どうやって攻めるか。怖いけどやってみようと、スリリングでエキサイトする。

「富里」では、そういう要素を十分に取り入れているのですね。
実際には、どんなコースになっているのですか。
早川

コースは長い方ではない代わりに、各ホールに非常に変化があります。知らないうちに18ホール回ってしまう感じですね。

よく退屈しちゃうコースがありますね。同じようなホールの連続で、攻め方も同じ、似たような景観で「もう早く上がって風呂に入って、食事でもしたい」なんていうコースが結構多いんですよ(笑)。 「富里」は多様な変化があってエキサイティングするドラマチックなホールがいくつもあります。ふつうゴルフ場には名物ホールが一つか二つありますが、「富里」にはそれがたくさんあります。

スコットランド
たとえば、どんなところですか。
早川

18ホール全部が名物ホールと言ってもよいくらいですが、とくに7番ホール。池があって、巨岩越しに攻めて行くホールです。池や岩も造ったのですが、通常は日本庭園風にいかにも造りましたというのが多い中で、「富里」のそのホールは大昔から岩があって自然にできあがったように造られています。当然、いろいろな攻め方が生じてきます。18番ホールもみなさん面白いと言います。これはロングホールで、1打、2打、3打ともにスリリングなんですよ。池の配置が巧妙で、技術プラス精神的な要素をプレーの中に求めるホールなんです。

池を避けて逃げれば逃げたで、さらに難しくなりますし。攻撃して、うまく行った時にはものすごい快感がありますけど、失敗した時には「ああやっぱりまずかった」と反省が生まれる(笑)。グリーンに乗ってからも変化があります。特に7番と18番は世界のどこに出しても通用する名ホールだと思います。あとのホールもそれぞれ個性的で、面白いと言われます。18ホール全体のリズムがいいんですね。出だしは易しくて、徐々に難しくなる。途中で劇的な盛り上がりがあって、気分がパッと転換できる。後半また心理的にプレッシャーがかかるホールになる、というようなリズムがあります。

会報を見ますと、クラブ運営も活発なようですね。
早川

ゴルフ場は器だけでなく、メンテナンスや従業員のサービスも大事ですね。温かい血の通った、自然ないやみのないサービスを徹底させるようにしています。もう一つ大事なのはクラブ運営です。「ゴルフ倶楽部」と言うのは、似たような人たちが集まってゴルフを楽しむ会員の集まりですから。いかにいい雰囲気で競技会を中心に、クラブライフをエンジョイできるかが大事です。倶楽部は会員による会員のための運営というのが基本だと思うんです。そしていろいろな競技を盛り込んで、多くの会員の方に参加してもらう。ゴルフはやはり競技することで本当の面白さが出てきますからね。

ゴルフ場経営はマンネリ化しませんか。
早川

どうしたら世界第一級のクラブになるかを追求して行けば、マンネリ化は防げます。高い目標を持つことが大事ですね。従業員教育でも同じことが言えます。常に高い共通の目標、理想を持つことによって従業員も活性化し、誇りを持って改善を積み重ねて行くのではないかと思います。

ゴルフ場は比較的いい立地に、割といいものさえ造っておけば、経営はやり方によっては楽なんですよ。お客さんはどんどん来てくれるし、日々競争して明日の仕事を取るっていう苦労はありません。ゴルフ場は、造るまではリスクが高いけれども、造ってしまえば経営は楽なんです。だから、ほどほどの経営をやって、ほどほどに儲けてるところが多いんですけどね(笑)。

高い目標を立てて真剣に最高級を目指すとなると、会員、従業員に対しても神経を使って常に努力しないといけない。苦しみの連続です。しかし、経営者としても従業員としても生きがいにもなりますね。そこで「自分だったらこういうものが欲しいなあ」と。共通性は必ずあるんです。そんなに目新しいことをやろうとはしてないんです。いいものだけが残ったのが伝統だと思うので、「廣野」など伝統的なクラブを参考にしていきたいと思ってます。

サービスの本質は何ですか。
早川

一時、日本全体、アメリカの影響などでサービスが低下した時代があって、その後マニュアル通りのサービスをしようという時代があって、今はそれだけでは不足だと。もっと心の通った温かいサービスをしなければいけないという時代に入っていますね。ゴルフ場も段々その方向になってきましたので、私は、一歩進めて従業員が楽しく働きながらもっと質の高いサービスができる方法はないかと追求しています。それには従業員も「われわれは世界最高のものを演出してるんだ」という誇りを持たないといけない。そして顧客に心から満足して貰うためにはどうしたらよいかを、いつも考え実行していくマインドを持たせることだと思います。

小さなことですが、トイレの片隅にも一輪挿しを置いて、従業員が自分で採ってきた花を生ける。メンバーがほめてくれると、従業員は喜んでまた美しい花を生ける。何も背伸びしたすごいことではなくて、真心をこめた瞬間を作ることですね。その瞬間の積み重ねが、サービスの本質だと思います。

コースのメンテナンスも、独特のものがあるようですが。
早川

 四季を通していつも最高の状態を維持するのが課題です。相手が植物、生き物ですから。特にグリーンはコースの心臓で、そこでシビれるようなゲームがある。鏡のように滑らかにして、常に転がりのいいグリーンにしないといけない。そのためにはべント芝を死ぬ限界スレスレぐらいに短く刈り込んで、管理しないといけないんです。一歩間違うとグリーンを枯らしてしまう。

そういう極限を追求した管理をするためには、気候、風土、肥料、プレイヤーの歩き方に至るまで研究しなければいけないわけで、日々の戦いです。寒かったり暑かったり、晴れるはずが雨になったりすると、手入れの方法も変わってきます。

日本は割と安易なメンテナンスをしていたんです。自然にも土壌にも恵まれてますから、植物が成長しやすい。しかも使っている高麓芝や野芝はバカ芝といわれるくらい強い芝ですから、ほどほどの管理をやっていれば、まあまあの状態になる。フェアウェーもグリーンも、ちょっと長めに刈っておけば、絨毯みたいにフワフワして気持ちがいいんですね。安易さと見た目のよさで、それがいいものだと考えられていたけれども、世界的プレイヤーがプレーするときには、それではダメなんです。短く刈り込んだ状態でないと、いいプレーにならない。日々の調査、研究、血のにじむような努力が必要になってきます。

近くにもう一つ新しいコースを造っておられますね。
早川

「富里」の隣町に「カレドニアン・ゴルフクラブ」を今年9月30日にオープンします。「富里」はどちらかというと女性的な柔らかい美しさですが、「カレドニアン」は男性的な荒々しいタイプです。しかし、根本の思想は同じスコットランド指向の戦略型コースです。これは今までの反省材料を全部まとめましたし、自然条件にも非常に恵まれて、あらゆる理想的な要素を盛り込むことができました。見に行った専門家に「日本で二度とできない本当に驚くべきコースに仕上がっている」と言われています。

ゴルフ場はまず自然条件が大事ですね。あれだけ広大な中に造って行くわけですから、自然条件が悪いところには努力の限界があります。同時に、私自身が高い理想を目指しましたし、設計者もゼネコンも、その下請けもものすごく燃えて仕事をしてくれました。

やはり燃えることが大事ですね。アメリカから設計者のほかにスーパーバイザー、つまり、監督と、その下に4~5人のシェーパー、自分で小型のブルドーザーに乗ってバンカーやグリーンを造り出す人が来てやってくれたんですが、彼らが昼食や夕食の時に、飯もそっちのけで興奮して話し合っているんですよ。「今日の造り具合は絶対、世界のあのコースに負けない」とかね。そのくらい皆情熱とエネルギーを注ぎこんでやってくれました。

燃えるには、やはり理由があると思いますが。
早川

一言で言うと世界最高のものを自分たちの力で実現しようという意識だと思うんです。いま自分たちがやっている仕事は歴史に残るんだ、これが日本のゴルフに対して一つの大きな衝撃を与えるんだと。私も「こんなやり方じゃダメだ。もっと真剣にやれ」とか怒鳴りつけたりしました。普段はおとなしい顔をしてますから、現場でガミガミ怒鳴りますと、みんなびっくりします。それでも後になって「なるほど、それは一つの高い理想に向かっての怒鳴りだったんだな」ということで、理解を得てきました。

早川会長は30年に亘って初志を貫いて生きています

出典/ザ・フォーラム・ニュース
1990年5月通巻98号

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