月間ゴルフレビュー コース探訪 に掲載されました


月間ゴルフレビュー【10月号】にカレドニアン・ゴルフクラブの
記事が掲載されました。

ゴルフレビューコース探訪 310
カレドニアン・ゴルフクラブ
(千葉県山武郡)
世界レベルの設計と、マスターズ開催のオーガスタ並みの
14フィートに挑戦し、なおかつ改良に改良を重ねて進歩を続ける
オーガスタ・ナショナルコースの13番をイメージしたカレドニアンの15番(パー5)だが、
グリーン左手前に重厚な石橋を改築。難度の高さに加え、景観のバランスも素晴らしくなった。
ゴルフのオリンピックと言われ、メジャー最高峰に位置するのが「全英オープン」である。これでもかという難度の高いコースでのレベルの高い争いで、選手もギャラリーもゴルフの素晴らしさを満喫する。
面白いのは、名門といわれる開催コースの会員が、「うちのコースはこんなに難しく、レベルが高いんだ」と一様に胸を張ることだ。
ゴルフは自然への挑戦であり、人間力が試されるゲーム。会員がゴルフの本質を理解しているからこそ出てくる言葉である。
残念ながら日本にこうした概念はない。日本オープンなどを開催する、名門といわれる古いコースの役員や会員の中には「こんなに難しく(ラフを伸ばし、グリーンのスピードを上げる)されたら、我々のプレーに支障を来す」という不平を何度聞いたことか。
ゴルフの歴史や、文化の違いといえばそれまでだが、この変わらなぬ意識が欧米と日本の大きな差を生んでいることもまた事実である。
そんな中で「欧米の名コースに負けてたまるか」と、挑戦をし続けているゴルフ場がる。今回紹介するカレドニアンGCである。
一度プレーしてみれば分かるが、そのレイアウトの素晴らしさ、隅々まで行き届いた良質のメンテナンス、景観の美しさ、完璧に近い練習施設など、どれをとっても欧米の名コースに優るとも劣らない。
特に注目すべきは、グリーンである。蓮の葉を6〜8枚重ねたような、緻密で変化に富んだアンジュレーションは、おそらく日本ではここだけと言っても過言ではないだろう。
そしてグリーンだけが単独で存在しているわけではないことだ。周囲の地形と連動し、マウンドとバンカーが一体となって調和。特に盛り上がった部分がなだらかなカーブを描きながら徐々に落ち込んでゆき、とぎれることなく凹んだ部分へと繋がっていくのは、あのオーガスタを設計したA・マッケンジーの設計哲学である「リバースカーブ」そのもの。
これが高度で幅広いアプローチ技術要求し、ゴルフをこれ以上なく面白くさせている。また、グリーンは、ティーインググラウンドから繋がっている(攻略ルートが明確)のがカレドニアンの特徴。
[ゴルフはグリーンから逆算するゲーム]がはっきり認識できる。
ホンモノのコース、倶楽部を目指してヒト、モノ、カネとあらゆる努力を投入して最高レベルを目指すカレドニアン・ゴルフクラブのあくなき挑戦。
日本初の14フィート超高速グリーンはすでに定着
カレドニアンGCは、創設者の早川治良(現取締役会長)がホンモノを志向し、スコットランドのリンクスを基調に、米国の戦略性をミックスさせた「モダンクラシック」コースでる。
これは前章で解説した英国出身のA・マッケンジーがその流れを創り、オーガスタ・ナショナルや、サイプレス・ポイントに代表される。
カレドニアンは米国の新進気鋭といわれたマイケル・ポーレットによる設計だが、彼は日本でも知られるロバート・トレント・ジョーンズシニアに師事。そのジョーンズシニアもまたマッケンジーの影響を強く受けている。
マッケンジーは30代の頃に南アフリカで起きたボーア戦争に軍医として従軍。その時ボーア軍の地形や、樹木をうまく利用したゲリラ戦法をヒントにし、後のカモフラージュといわれる技法を設計に取り入れた。敵の目を欺く戦略技法を、ゴルフコースに取り入れ、錯覚を起こす高度な設計である。
マッケンジーの影響を受けたポーレットもまたカレドニアンの随所に、この設計を取り入れている。これがプレーするゴルファー(会員を含めて)にゴルフの妙味を引き出させる効果を発揮している。
バンカーと池に挟まれ、うねるグリーンと難度の高い
13番(パー4)だが、美しさも抜群
リンクスと米国の戦略性をミックスさせた
モダンクラシックの16番(パー4)
カレドニアンが標語としている「TAM ARTE QUAM MARTE」は古代ローマ軍の軍略用語で「力と同様に技も」の意味。力だけでなく、頭脳や知略を使って戦えという箴言だ。早川氏がコース建設に当たってスコットランドのロイヤル・トルーンGCを視察した際、同コースの標語として掲げられていたものを一目で気に入り、同コースのセクレタリーに頼んで、使用を許可されたといういきさつがある。
その思想はカレドニアン全体に行き渡っている。同コースを攻めるには、知略も必要なら、設計者の意図を読む洞察力、グリーン周りの多彩なアプローチとパッティング技術など、プレーヤーの持てる力をフルに稼働させる能力が要求される。まさに標語そのものである。
だがこれほどの高度な技術(アベレージゴルファーには、逃げ道も用意されている)を必要としながら、早川氏はホンモノ志向は止まるところを知らず、2014年にはとうとう「オーガスタ並みの14フィート超高速グリーンに挑戦」のスローガンを掲げ、実現に取り組んだ。
これには膨大な費用、周到な計画、芝の研究、メンテナンス技術、様々なテスト、そして管理スタッフの教育、モチベーションの共有と、他では真似の出来ない労力をつぎ込んでいる。
満開のツツジに囲まれて、15番グリーンに向かう心が弾む
雄大なドライビングレンジも改良に改良を重ね、
最高の設備を備えている
練習場(ドライビングレンジ、アプローチ練習場、パッティンググリーンなど)の徹底改善を始め、ティーインググラウンドの新設、通路補修等と、補強、改修は目を見張るものがある。そして今年の8月には、名物15番ホール(パー5)グリーン手前のクリークに、セントアンドリュース・オールドコース18番前方を横切る小川に掛かるローマンブリッジをモチーフにした見事な石造りの橋を完成、披露させた。
こうした努力の積み重ねでカレドニアンの会員は「日本最高レベルのコース」と胸を張るようになった。それはゴルフ場と会員の本来あるべき姿でもある。

(文 宮崎紘一)
月刊ゴルフレビュー 【10月号】(2021年9月20日発行)より抜粋