月間ゴルフレビュー に掲載されました


月間ゴルフレビュー【6月号】にカレドニアン・ゴルフクラブの
記事が掲載されました。

カレドニアン・ゴルフクラブ
(千葉県山武郡)
スコットランドのリンクス魂と、アメリカンストラテジー(近代戦略型)を 融合させたハイレベルなコース、カレドニアンGCで日本のプロの実力が露わにされる
幾重にも連なるマウンドが、リンクスコースを彷彿させる9番ホール(パー4)

 「ゴルフコースは人を育てる」はゴルフの世界での不文律の言葉である。
 だが残念ながら、日本ではこうした言葉が当てはまるゴルフコースは数えるほどしかない。 人が育たない証明はプロゴルファーを見ても歴然としている。 世界へ出ていくと、まったく通用しないからだ。その理由は世界レベルに大きく後れをとるトーナメントコースにある。
 そんな中で今年注目されているトーナメントがある。9月21日から24日まで千葉県のカレドニアン・ゴルフクラブで開催される「アジアンパシフイックダイヤモンドカップ」がそれである。
 なにしろ会場となるカレドニアンGCは日本には見られないハイレベルなゴルフコース。プロの実力がこれ以上試される舞台はないからだ。一体どんなコースか。改めて紹介してみよう。
 カレドニアンGCは1990年(平成2年)に開場した。この時期はバブル経済末期とはいえ、ゴルフ場数もゴルフ人口もうなぎ登りで、全国累計で約2300コースに達した新設ラッシュの最盛期だった。当然接待ゴルフを目的とした、2グリー ンでやさしく回れるコースが主流だった。
 だがそんな中で、1981年に母体会社東京グリーン株式会社を創設した早川治良社長(現取締役会長)は大胆な決断をする。「どうしてもゴルフの本質が問われる世界レベルのコースを造りたい。日本が世界に誇れるコース。いずれは世界的な試合を開催し、日本のゴルファーが世界の実力に肩を並べるための環境を整えたかったのです」と当時の思いを語る早川氏。

カレドニアンGC建設に強い影響を与えた摂津茂和氏と、金田武明氏
 この早川氏の情熱を受けて、カレドニアn ンGCの建設には様々な人物が関わっている。
 まず1人目は世界のゴルフ史に詣が深く、内外の歴史書「世界ゴルフ大観」を著し、JGAゴルフ博物館の設立に委員長として尽力したゴルフ史家の故・摂津茂和氏。早川氏と親交のあった摂津氏は「ゴルフとはスコットランド海岸のリンクスに始まり、砂丘と風に負けないプレーで、強い精神力を培う紳士のゲームであるから、コース建設に当たってはぜひスコットランドを訪ねてみるとよい」とのアドバイスを授けた。
 その教えを受けて早川氏はスコットランドを中心に世界の名コースを視察した。そしてその視察旅行の中で、全英オープン開催などで知られるロイヤル・トゥルーンGCを訪れた際、同コースのハウス内に掲額されていた「TAM ARTE QU AM MARTE」という標語が目に入った。聞けばこの言葉はラテン語で「武力と等しく計略も」の意味だそうで、ローマ帝国軍の戦略用語である。この蔵言は、力を鼓舞してコースをねじ伏せるようなパワーゴルフ全盛の米国式デザインとは、一 線を画するリンクス式ゴルフを象徴する言葉だった。「この言葉こそ、これから造るコースの大きな指針となる」と感銘し、ロイヤル・トゥルーンに頼み込んで使用許可を得たといういきさつがある。
 早川氏に大きな影響を与えた2人目の人物は、前述摂津氏を師と仰ぎ、世界アマのプレーイング・キャプテンとして出場し、コース設計家としても知られた故・金田武明氏。金田氏は当時米国の「タイム・ライフ誌」アジア代表でもあり、世界的なコー ス設計家のR・ T・ジョーンズ親子と親しく、その極東地区のスタッフだったやはりコース設計家のジョン・マイケル・ポーレットとも親交があった。ポーレットは英国のリンクス魂を現代的戦略型デザインに取り入れた優れた手腕を持ち、金田氏はこれを高く評価していた。氏はかねてから摂津氏と共にコースの基本を無視した日本独自の2グリーンに異論を唱え、「ゴルフコースはターゲットゲームという本質から見ても1グリーンが基本。1グリーンに、直径5~8メートルの蓮の葉を4枚から6枚浮かせ、各々の蓮の葉は、高さ50センチから1メートル50センチの高低差をつける。そしてこれらの蓮の葉をなだらかな傾斜面で結ぶと、変化の多いグリーンとなる。この形状だと、トーナメントでは最低4ヵ所のピンポジションの設定が可能(普段のプレーは6~8ヵ所)この結果プロが蓮の葉にうまく乗せればバーディチャンスとなる。一方で蓮の葉から外れれば、パーどころか、ボギーも怪しくなる。選手はピンポジションを想定しながら、ショットを繋ぐことになり、緻密で、高度な戦略ゴルフが必要となる」と語っている。
オーガスタ13番をイメージした15番。狙いはグリーンのみの最難関ホール

戦略性芸術性を巧にミックスさせたJ・M・ポーレットの会心作
  この理論を具現化したのが、設計のJ・M・ポーレットである。英国のリンクス魂を内に秘め、それを基本に現代的戦略型デザインとミックスさせるポーレットは、早川氏の理想とするものに最も近い。2人は夜を徹して語り合い、理想のコース造りに着手した。
 ポーレットはゴルフの最終夕―ゲットであるグリーンを中心に、戦略的かつ芸術的なコースをデザインする。プレーヤーの持てる技術を最大限に引き出すために、18ホールをひとつとして類型的なものにせず、さながらハーモニーを奏でるように、リズムとバランスを重視する。 グリーンとフェアウェイには角度をつけ、要所、要所にバンカーや池、クリーク、マウンドを配置する。グリーンは前述したように、蓮の葉を浮かべたような幾重ものうねりがある。好スコアを出すにはそのピンの位置から逆算して、ショットを繁ぐ高度な技術と、コースマネジメント(知略)が要求される。まさに標語にある「力(飛距離ではなく、人間力)と、知略(頭脳)」がコース攻略のキーワードとなる巧みな設計だ。
 代表的なホールを紹介してみよう。 14番(385ヤード、パl4)は第2打が左に打ち下ろしになる。ここは日本のコースではまずお目にかかれない風景が展開する。なんとグリーンの右半分がマウンドで遮られ見えなぃ。右にピンが切ってあれば、狙うにはマウンド越えとなる。 正確な距離感と高くて止まるショットが要求される。グリーンは縦横に傾斜があり、目測を誤れば、パーはかなり難しい。かつてここでプロ競技が開催されたとき、某トッププロは「アンフェアだ」と不満を漏らしたが、それこそ世界を知らない証拠。英国のリンクスにはこうしたホールは当たり前にある。力量が問われるホールだ。
 15番(498ヤード)は通常はパー5だが、試合ではパー4の設定となる。ほとんどフラットなホールで、グリーンを囲んでクリークが流れる。このホールは、あのオーガス夕の13番のイメージを彷彿させる。
 グリーンは縦長だ。逃げ場はほとんどなく狙いはグリーンのみ。それも右サイドはクリークに向かって傾斜。長いクラブで、なおかつ点を狙って止めるショットが要求される。
 18番(547ヤード、パー5) は名物ホール。大きな池越えを狙うか、左から安全に攻めるか選択させられる。グリーン手前には13番と共有する広大な池が横たわり、なおかつ美しい白砂のビーチバンカーが続く。フェアウェイには戦略的なバンカーが点在し、正確にショットを繁いでいかないと、バーディどころかパーもおぼつかなくなる。インは13番からアーメンコーナーが続き、プロにとっては厄介な戦いが要求される。
 カレドニアンGCは3年ほど前から、オーガス夕並みの超高速グリーン造りに取り組んでいる。ダイヤモンドカップでは13.5フイートが日標だ。おそらく日本のトーナメントでは、最速となることは確か。コースも、グリーンスピードもまさに日本版マスターズとなる。

不世出のアマチュア、中部銀次郎氏が「オーガスタを彷彿させる」と惚れ込んだカレドニアンGCのランドスケープ(景観美)と戦略性。高速グリーンを誰が攻略するかが最大の見どころに
 カレドニアンGCの素晴らしさ、レベルの高さをこよなく愛した人物は前述の摂津茂和氏や金田武明氏だけではない。日本アマ6回優勝という不世出の名アマチュア、中部銀次郎氏(故人)もまた同コースに惚れ込んだ一人として知られている。
 現役を退いた後、テレビ局の要請で2度マスターズのゲスト解説者に招かれた中部氏は、オーガスタコースに魅了された後、カレドニアンをプレーしている。そしていっぺんにその魅力に取りつかれた。
 中部氏はその時の感想をこう語っている。
 「カレドニアンをプレーしてすぐオーガスタを連想しました。 第一印象として、プレーして愉しく、歯応えのある難度が心地よい範囲で、コース設計の永遠のテーマに対する模範的解答があると思えました。13番や18番の欧米的な景観の中に、日本人の伝統的美意識“白砂青松”があり、人間の美意識に人種の違いはないということ。それでいてプロやアマチュアそれぞれレベルに応じてターゲットが違ってくる。このように1つのホールに多くの攻略ルートがある設計パターンをストラテジック(戦略型)と言うのでしょう。
 オーガスタを創ったボビー・ジョーンズはゴルフにはトーナメントのゴルフと愉しむゴルフがあるといいましたが、カレドニアンはまさに、この言葉の意味がコースに混在しています。それが何ともいえない」
 以後中部氏は、自分のホームコースよりカレドニアンに傾倒し、ことあるごとに訪れ、「どちらがホームコースかわからない」とまでいわれていた。
 またこの中部氏を目標とし、日本オープンローアマ4回を始め、総タイトル100以上という日本を代表するトップアマの阪田哲男氏(57)も、 「カレドニアンは『力と同様に技も』の標語どおり、力づくのゴルフは通用しない。頭を使った知的なゴルフこそが攻略の扉を開いてくれる。ここには戦略型コースの理想形がある」と絶賛している。プロ以上にゴルフの真髄、奥深さを熟知した二人のトップアマの証言が何よりカレドニアンの全てを物語っている。
中部銀次郎氏が”白砂青松”と絶賛した3番(手前)と後方の18番。どちらも美しさと難度が織りなす名ホール

 そしてこれはあまり知られていないことだが、男子プロの池田勇太、女子の上田桃子がたびたびカレドニアンで練習している。
 池田は今年の1月3日も訪れ、熱心にラウンド。そしてマスターズを始めとするアメリカ遠征に旅立った。厳しい米ツアーのコースでは、生半可な技術では通用しない。それを身につけるには世界レベルのカレドニアンでの練習が効果的と判断したのだろう。事実、今年の米ツアーでの池田は、これまでと違うゴルフを見せている。 その自信を引っ提げて池田は「ダイヤモンドカップ優勝を狙う」と近しい人間に語っている。
 上田桃子もカレドニアンで人生が変わった1人。彼女は今年4月に故郷熊本県で行われたKTT杯バンデリンレディスで、地元の声援に応えて大活躍だった。最終日最終18番を迎えて2位に2打差の首位。誰が見ても優勝は確実という中で、最終ホール、1メートルのパーパットを外し、このホールバーディとした西山ゆかりに追いつかれプレーオフ。そのプレーオフでもパットが入らず逆転負けを喫している。
 さすがに失意のどん底は隠せず「今年勝てなかったらゴルフを辞めよう」とまで落ち込んでいた。 だが彼女はその後秘かにカレドニアンで練習に没頭。「勝負のかかったパッティングと、それに負けない精神力を身につけるにはこのコースでの練習が一番」と感じ取ったようなのだ。
 そして約1ヶ月後の中京テレビ・ブリヂストンレディスで強敵テレサ・ルーと競り合って見事3年ぶりの優勝。勝因はパットの冴えと、粘り強さだった。  「コースは人を育てる」の証明である。
 カレドニアンGCは、人間力が試されるコース。久方ぶりの男子ツアー、アジアンパシフイック・ダイヤモンドカップでは、アジアの強豪たちも参加する。ここでの試合はまさに真の実力を試すにふさわしい。ゴルフファンにとってもこれ以上ないエキサイティングなゲームが見られるはずだ。
(文 宮崎紘一)

月刊ゴルフレビュー 【6月号】(2017年6月20日発行)より抜粋