カレドニアンGCと富里GCでは今年の春から”14フィートに挑戦!”というキャンペーンを行っている。世界のプロ・トーナメント並みの高速グリーンを堪能して欲しいという企画。この狙いを早川会長はこういう。
「これまでスコットランド・リンクス思想を基本にした戦略性の高いワン・グリーンのコースとして愛されて来ましたが、関東近県の名門コースがベント芝ワン・グリーン化改造をしたりして、うちと似たグリーンを造り始めた。時代の先端を走って来た者として300ヤード時代に挑戦する必要を感じたのです」
J・M・ポーレット設計は英国のリンクス思想に米国式造形を施し、時代の先端を行く難グリーンで知られて来たのは事実。平均600平方メートルの変幻自在なグリーンがゴルフのもう一つの醍醐味であるパッティングを興味深いものにした。コンター(起伏)が複雑で「グリーンに乗れば2パットでOK」とは行かない面白さがあった。だから、一つのグリーンでも旗の位置によっては攻略ルートが変化するのもここでは常識だった。
それを更に難度を上げて、高速グリーンにしようというのである。しかも、その高速グリーンを転圧機で硬くするのではなく、芝草の正しい生育方法で演出しようという方式である。芝草の健康な育ち方をさせると、夏の暑さにも負けず、健康な芝根が強さを持つというのだ。
ベント芝のワン・グリーンはカレドニアンと富里2コースのトレード・マークとして多くのビジターやメンバーに愛されて来た。しかし、開場以来20年余りの年月で、コースの見直しも余儀なくされるもの。これまでバンカーの配置、バンカー・エッジの老朽化の修復とメンバーの目につく改修は数多い。しかし、速いグリーンの実現にはもっと根本的なグリーン床の改修が必要となった。ご存知の通り、グリーンの床構造とはUSGA方式(全米ゴルフ協会のグリーン・セクションが研究・提案している粒子の異なる砂利と砂質の構造)が一般的で、コースのある地域の気候条件で変わるが、基本は同じである。砂利や砂で排水と保水をコントロールする訳である。
しかし、時代を経るとこの床構造に不純物の堆積で不透水槽が出来やすい。
当コースはグリーン上から25センチ前後までバーチカル・ドレインで穴を開け、その不透水層を撹拌して地下構造を改善、有機肥料で根を健全に育つように促すことにした。これはグリーンの画期的な更新作業で、芝草の根が正しく発育し、硬いグリーンを実現するために採用した。
「そうした根本的地下構造の改善で、芝草に密度、根の健全な張り方が実現、初めて2.8ミリの刈り高で14フィートのグリーン・スピードが実現するのです」と早川会長は胸を張った。速いグリーンの形状は昔のままだが、目に見えない床構造と芝草の根の張り方はまったく新しいグリーンになったのである。
さて、14フィートの速さを持つグリーンとはどんなものだろうか?現在の一般プレーヤーは冬は乾燥時季に速さを感じてもせいぜい10フィート前後だろう。ちなみに昨今の日本のトーナメントは水を切り、転圧して12フィートくらいが普通である。それでもトップ・プロでさえ惑わされるスピードであることはTV観戦した人には分かるだろう。ただし、石井グリーン・キーパーは「速さを出した時にはボール・ロケーションに神経を遣う」と言っている。スティンプ・メーターの数字は比較的平坦なグリーンで往復のテストで平均値を出すもの。同じ14フィートでも下がり傾斜ではより速くなるので、カップ位置に配慮が必要になるのだ。
「これでポーレット設計の戦略性はさらに上がるでしょう」と早川会長は言う。
時代の先端を行くカレドニアンGCと富里GCのグリーンがまた新たに”高速グリーン”で話題を呼ぶことは間違いないだろう。
(2014年9月 TAM ARTE QUAM MARTE 55より抜粋)
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